ホーロー浴槽は耐久性に優れている一方で、傷やサビによるダメージによる影響が顕著に現れやすい浴槽です。
この記事では、ホーロー浴槽の補修や塗装に関する基本情報からDIY方法、注意点など、ホーロー浴槽塗装のDIYのノウハウを網羅的にまとめております。
今回の記事は、塗装歴40年のベテラン・ホーロー浴槽塗装職人の井上保さんの監修のもと作成しています。
また、浴槽塗装DIYの工程について3分間のダイジェスト動画もあります。参考までにご覧ください。
ホーロー浴槽とは
ホーロー浴槽とは、金属製の基材(通常は鋳鉄や鋼)にガラス質のエナメルを高温で焼き付けた浴槽のことです。
およそ8割型の一般住宅の浴槽はホーロー浴槽を使用していると言われております。一方で、アパートやホテル等では人工大理石やFRPを主に使用しております。
金属の表面に強固なガラス質のコーティングが施されており、傷やサビに強く、長持ちします。ホーロー浴槽は光沢があります。滑らかな表面を持っているので、高級感や清潔感のある見た目が特徴的です。
しかし、経年劣化により、ガラスコーティングが剥げることで錆びやすくなったり、水垢が溜まりやすくなるので経年劣化による見た目の影響を受けやすいバスタブです。
ホーロー浴槽補修DIYの手順
浴槽の外観を新しく保つための塗装方法について解説します。DIYでの塗装方法と必要な材料についても詳しく紹介します。また、プロによる塗装のメリット・デメリットを比較を通しご自身に合った補修方法を選択いただけます。
DIYでホーロー浴槽塗装をする際に必要なもの
必要なものは全てホームセンターもしくはAmazon・楽天で全て揃えます。ですが、プライマー塗料は安価なものもありますが、できる限り良質のものを選んでください。
- 最初の研磨用の180番のサンドペーパー
- シリコンオフ
- プライマーエポ式系溶剤型2液性塗料/またはプライマーエポ式系水性系※剥がれやすい
- 上塗り用の塗料(仕上げ用)&硬化剤
- 塗装専用マスク
- ゴムやビニール手袋
- 仕上げ用の320番のサンドペーパー
- 研磨ポリッシャー
- マスキングテープ
- シリコンコーキング
材料に妥協をすると塗装剥げに繋がり、費用がかさむ可能性もあります。DIYの場合、最低3万円から5万円近くの費用が必要になります。
井上保
最低3万円から5万円だと、水性塗料(塗装剥げを起こしやすい)で安価な塗装マスクを使用して作業をすると思います。ですので、DIYで行う場合は、換気や塗料塗布に細心の注意をして作業しましょう。
浴槽塗装には、基本的には溶剤型2液性塗料を使用することをオススメします。塗装剥げを防止できるのと、塗料のノリが良いためです。ですが、溶剤型の塗料を使用する際には塗装専門の空気清浄機や高価な専門マスクが必須です。
ホーロー浴槽DIYでの塗装方法
次の手順でホーロー浴槽塗装DIYを行うことをおすすめします。
- 研磨の準備と実施: 180番のサンドペーパーを使用し、浴槽を2時間ほど丁寧に研磨します。この工程は塗装の付着を良くするために重要です。
- 下地処理: 浴槽の表面に残った油分を除去するために、シリコンオフという特殊な薬品を使用します。この処理は塗装剥げを防止するために最も重要です。この時、綿の手袋ではなくゴムやビニールの手袋を使用して、毛が混入しないように注意します。
- プライマー塗装: プライマーエポ式系溶剤型2液性塗料を塗ります。この塗料は臭いが強いため、マスクの着用が推奨されます。溶剤型なので作業中は、随時換気を必ずしてください。プライマーは2〜3回塗り、それぞれの塗装後には十分乾燥させます。
- 再研磨: 乾燥後、320番のサンドペーパーで表面を30分かけてツルツルになるまで研磨します。
- 仕上げの塗装: エポ式系溶剤型2液性塗料で上塗りを3回行います。塗装時にはムラやばらつきが出ないように均一に塗ることが重要です。水性塗料も使用可能ですが、塗装剥げを起こしやすく、色落ちや肌触りが異なるため選択は慎重に行う必要があります。
- クリア仕上:最後に、浴槽の光沢感を出すためにクリア仕上げ(浴槽コーティング)を施し強制乾燥や自然乾燥を行います。
注意点:
- 換気を良くし、有害な粒子の吸入を避けるためにマスクを着用する。
- 油分が残っていると塗装のノリが悪くなり、剥がれの原因になるため、下地処理は念入りに行う。
- 塗装工程では均一に塗ることを心がけ、仕上げの際にムラやばらつきがないようにする。
例えば、ホーロー浴槽はガラス質のコーティングが施されており、研磨は主に表面の汚れや脱脂を目的とします。
研磨には細かい粒度のペーパーを使用し、浴槽の表面を均一に扱い傷を最小限に抑えます。研磨後、プライマーを薄く均一に塗布することで、塗装の接着性を高めることができます。
上記の手順に従って塗装を行うことで、DIYでホーロー浴槽のリニューアルが可能です。
DIYでホーロー浴槽補修・塗装を行うメリットとデメリット
DIYのデメリット
- コスト削減: 専門業者に依頼するよりも、材料費のみで済むためコストを大幅に削減できます。
- 自由なカスタマイズ: 自分の好みに合わせて色や仕上げを選べます。
ただ、材料コスト、特にプライマー塗料の質を妥協するとホーロー浴槽の場合は、塗装はげを起こしやすいです。自分で塗装をして、取り返しのつかないレベルの塗装剥げによってムラがひどくなり、ひどい劣化につながる可能性もあります。場合によっては、最初から浴槽塗装業者に依頼した時の倍近くの費用がかかる可能性もあります。
また、防毒マスクも安価なもので揃えてしまうと安全面に問題がありますので、できる限り良いマスクを買うとなるとDIYの方が費用が高くなり得ます。
ホーロー浴槽塗装費用に関して、DIYと業者への依頼をする場合を比較した記事がありますので、ご参考にしてみて下さい。
DIYのデメリット
- 技術と経験の必要性: 塗装には相当程度の技術が必要です。初心者には難しいです。
- 安全面の問題:溶剤型の塗料は扱いが難しく、安全な施工ができるかどうかが問題
- 時間と労力: 研磨だけで2時間以上要します。乾燥から仕上塗装までの全工程には1日がかりな大作業になります。
- 質の問題: 多大な労力をかけても、塗装技術によって仕上がりの質にばらつきが生じる可能性があります。なので、あっという間に塗装剥げを起こす可能性もあります。
車の塗装に近い感覚で、塗装には熟練な技術が必要です。車の塗装を自分で完璧にできる人が少ないように、浴槽塗装にも車塗装に近しい高度な技術が必要です。
ホーロー浴槽のメンテナンス
ホーロー浴槽は耐久性が高い浴槽ですが、定期的なメンテナンスが非常に大切です。ここでは具体的なメンテナンス方法について、ステップごとにご説明します。
ステップ 1: 事前準備
- 必要な道具: 柔らかいスポンジ、マイクロファイバーの布、中性洗剤、浴槽用クリーナー、ゴム手袋。
- おすすめ洗剤:オススメの洗剤は「東邦 ウタマロクリーナー」です。または、水軟化剤を含むもの。水軟化剤は水垢の形成を抑制し、水滴によるシミの発生を防ぎます。界面活性剤を含むもの。水と油性の汚れを結びつけて洗浄します。非イオン性界面活性剤や陰イオン性界面活性剤といった車の洗車に使われる洗剤と同類の成分が含まれる洗剤が適しています。油性の汚れを効率的に除去に役立つ脱脂剤が含まれていればおすすめです。
- 注意点: 研磨剤が含まれている洗剤や硬いブラシは避け、できるだけ柔らかい素材の掃除器具を使用し、浴槽の表面を傷つけないようにしましょう。
ステップ 2: 浴槽の表面を湿らせる
- 浴槽全体に水をかけて、表面を湿らせます。これにより、汚れが落ちやすくなります。
ステップ 3: 洗剤を使用
- 中性洗剤(東邦ウタマロクリーナー)を柔らかいスポンジに適量取り、浴槽の表面を優しく洗います。
- 頑固な汚れには、浴槽用クリーナー(※東邦ウタマロクリーナーで十分なケースが大半です)を使用すると効果的です。
ステップ 4: 水洗い
- スポンジで洗った後は、清潔な水で洗剤や汚れをしっかり洗い流します。
ステップ 5: 乾燥
- マイクロファイバーの布で水滴を拭き取り、浴槽を乾燥させます。これにより、水垢の発生を防ぎます。
ステップ 6: 定期的なチェック
- 定期的に清掃後の浴槽のツヤを確認し、小さな傷やサビがないもチェックします。
- 傷やサビを見つけた場合は、ホームセンターで浴槽の補修キットを購入して一時的に補修はできますが、状態によっては早めに浴槽塗装業者に相談しましょう。
ホーロー浴槽の補修
ホーロー浴槽に生じた軽微な傷、ひび割れやサビは、放置するとさらなる損傷を招くことがあります。補修方法にはいくつかの種類があり、自分で行えるDIY方法からプロの業者に依頼する方法まで、具体的な手順と必要な材料について解説します。
ホーロー浴槽の補修に必要なもの
- ホーロー浴槽補修キット(ホームセンターやAmazon・楽天で販売されているものを選びます)
- 細かいサンドペーパー
- 清潔な布
- マスキングテープ
ホーロー浴槽補修キットを選ぶ際は、プライマー(接着剤)とエポ式系二液型パテ(水に強いパテなので浴槽に適している)を選んでください。
とは言ってもホームセンターでホーロー浴槽の補修に必要なキットを見つけるのは難しいので、オススメの補修キットをご紹介します。
Cセメダイン超多用途シールは、ホーロー浴槽の応急処置としての補修にはオススメです。ただ、あくまでも応急処置なので、深刻な浴槽補修が必要な場合はプロに依頼することをオススメします。
ホーロー浴槽のDIYでの補修方法
浴槽状態によっても変わりますが、ほんとんど浴槽の補修は錆と穴に関する作業と考えて良いでしょう。それぞれの補修方法についてお伝えます。
サビの場合は、サンドペーパーで研磨してから布で拭き取ります。他の部分に広がらないように、マスキングテープを使用して囲みます。
プライマーを塗って乾燥させた後、エポ式系二液型パテを塗ります。穴も同様な流れで、プライマーを塗って乾燥させた後、エポ式系二液型パテを塗ります。 塗布した補修材がしっかりと固まるまで、十分な乾燥時間を確保します。
ホーロー浴槽の状態が深刻で新しい浴槽にする場合は、浴槽自体の価格帯は10万円から30万円ですが、既存の浴槽の廃棄、新しい浴槽の配送、配管や取り付け費用を全て入れると100万円を超える高額な費用がかかります。
また、浴槽は大型廃棄物扱いとなるのに加え、材質が非分解性なので廃棄されたとしても自然分解されにくく長期間存在するため環境負担がとても大きいです。
経済的、環境負担を総合的に考えても浴槽塗装をおすすめします。
ちなみに浴槽ひび割れ補修に関して、紹介記事もありますので、ご参考にしてみて下さい。
ホーロー浴槽塗装業者を使うメリットとデメリット
浴槽塗装業者を使用するメリットは、下記の4点になります。
メリット:
- 専門的な技術: プロの業者は適切な材料選びや組み合わせ、適切な作業工程への熟知、塗装技術を持っているため、 新品当時の清潔感のある仕上がりが期待できます。
- 時間の節約: 自分で行う必要がないため、塗料を調べる時間、実際の作業時間(研磨器を利用するので研磨作業が早く、手でサンドペーパーを使い研磨するよりも圧倒的に早く楽に浴槽塗装ができる。)を合わせたら丸々1日から2日分の時間節約できます。
- 費用対効果が高い:浴槽塗装は10万前後で業者に依頼できます。ホーロー浴槽交換代よりの約1/10に抑えられます。
- 安全性:浴室塗装専門の空気清浄機や防毒マスク、飛沫を防ぐマスキング等、安全面に徹底配慮した施工をしてくれる点は大きなメリットです。
ホーロー浴槽塗装の材料のプライマー塗料と仕上げ用塗料の組み合わせによっても、仕上げりが大きく異なります。プライマー塗料と仕上げ用の塗料の組み合わせを間違えると、塗装剥げの発生率も大幅に変わります。また、作業工程も重要でプライマーの塗り方、乾燥時間、重ね塗りの回数など工程ひとつとっても細かい技術が必要になってきます。
プライマーエポ式系溶剤型2液性塗料を使用する場合、塗料の乾燥がとても早く作業性が悪く、ムラのない塗料塗布が難しいです。
デメリット:
- コスト: 専門業者に依頼すると、その分の費用(DIYよりも約5万円前後プラス)を要します。
- 業者選びの必要性: 良い業者を選ぶ必要があります。
ホーロー浴槽塗装の施工例
元々の色合いを保ちつつ、浴槽塗装にて清潔感を取り戻したケースになります。
ホワイトクリア仕上げにより、白を基調とした清潔感のある色合いにすることで浴室全体の雰囲気も大きく変化します。
今回ご協力いただいた、ホーロー浴槽塗装職人の井上保さんにご監修と事例のご提供をいただきました。
他にも多数のホーロー浴槽の施工例を下記にてまとめています。
まとめ
ホーロー浴槽の補修や塗装は、適切な方法で行うことが重要です。間違った浴槽塗装や補修はかえって寿命を縮めてしまうので注意が必要です。DIYとプロの業者による修理のそれぞれにメリット・デメリットがあるので、ご自身の住宅の浴槽状況に合わせて最適な方法を選びましょう。