経年劣化とともに塗装剥げやサビが目立ち、快適に使用できない方が急増しています。
まずは、専門業者に依頼する前に、DIYでの修復方法を知りたいと思いませんか?
この記事では、ステンレス浴槽の塗装から錆の落とし方、リメイクシートの活用法まで、あなたの浴槽をデザイン性豊かに蘇らせる方法を紹介します。
当記事は、18歳から塗装一筋、40年の経験をお持ちの井上保さん監修の記事となります。
なお、浴槽塗装のDIYの難易度と浴槽塗装業者を使用する時のメリット・デメリットについてまとめております。
ステンレス浴槽塗装のDIYの手順について、3分間のダイジェスト動画もありますので、よかったら参考にして下さい。
ステンレス浴槽塗装のDIY可能か
まず、ステンレス浴槽塗装をDIYで行うことは非常に困難です。浴槽塗装は非常に高度な塗装技術を必要とするものですが、職人の中でもステンレス浴槽塗装は難しいと言われます。
なぜステンレス浴槽が高難易度かというと、下地処理(特に研磨作業)に特殊な施工を必要とするからです。初心者の方では、浴槽に合った下地処理が適切に行えない可能性が高いです。
基本的には、信頼できる塗装業者に依頼することをおすすめしますが、それでもご自身で行う場合は手順をご説明いたします。
塗装歴40年の職人の井上さんの経験を参考に、浴槽塗装が難しいタイプをまとめてみました。
浴槽タイプ | 塗装難易度 | 特徴 |
---|---|---|
ステンレス浴槽 | A | 業者でさえ施工を躊躇する浴槽塗装の中でも高難易度。 とにかく塗装剥げを起こしやすいです。 |
ホーロー浴槽 | S | 一般的な住宅で浴槽塗装を希望される方の9割はホーロー浴槽です。ホーロー浴槽に関しても、「下地補修(クラック等の補修)」「下地調整(清掃・脱脂・サンディング)」の難易度は高めです。 |
人工大理石浴槽 | SS | 浴槽の表面にボツボツが形成され、研磨やサンディングの際に綺麗にするのが手間がかかります。 |
FRP浴槽 | C | そもそもFRP浴槽自体が安価なので新しく取り替える方が多いです。 |
ステンレス浴槽塗装DIYの手順
材料と手順、注意点の順にご説明します。
ステンレス浴槽塗装DIYに必要な材料
DIYに必要な材料は下記の4点です。それぞれ解説します。
- 専用の塗料
- サンドペーパーもしくは研磨器
- プライマー
- シリコンオフ(脱脂)
- ゴムかビニール手袋
- 綺麗な布(シリコンオフ使用時)
- 防毒マスク(塗装専用)
- つなぎ
- ポリッシャー
専用の塗料※仕上げに使用する塗料
ステンレス浴槽に適した塗料には下記が挙げられます。水性、溶剤性があり、基本的には溶剤性を選ぶことをおすすめします。理由は、溶剤性の方が水に強く塗装剥げを起きにくいです。ただし、溶剤性の塗料には適した塗り方、手順があります。特に、軽微な塗り方や手順、プライマーとの組み合わせで仕上がりが大きく変わってきます。
- エポキシ樹脂塗料: 高い耐水性と耐薬品性を持ち、硬い仕上がりが特徴です。ステンレスの表面を長期間保護するのに適しています。
- ウレタン樹脂塗料: 良好な耐水性と耐候性を持つ塗料で、光沢感を保ちながら耐久性のある仕上がりを提供します。
- アクリル樹脂塗料: 水性または溶剤性があり、速乾性が高いのが特徴です。塗膜が柔軟で、熱や紫外線にも比較的強いです。
- 二液型塗料: 硬化剤と塗料を混合して使用するタイプで、特に耐久性に優れており、プロフェッショナルな使用に適しています。
下地処理(サンドペーパーによる研磨と脱脂)
工程の一番最初は、サンドペーパーで元々の塗装や油汚れを徹底的に落とします。そして、シリコンオフを布につけて、脱脂処理を行います。
研磨の処理と脱脂処理は非常に重要なので徹底的に下地処理を行います。
下地処理(研磨と脱脂)は、プライマーのノリの良さと関係しています。なので、どれくらい研磨するのかがポイントで初心者には判断がとても難しいです。
プライマー
プライマーの役割は、高温にさらされる可能性のある環境下において、塗装される表面を錆や腐食から保護するためのものです。ですので、ステンレスの表面に塗料がしっかりと固定されることを第一に考えてプライマー塗装を行います。
推奨されるプライマーは下記の通りです。
- エポキシプライマー: ステンレスに優れた密着力を提供し、耐水性・耐薬品性に優れています。
- ウレタンプライマー: 耐久力を高めてくれる塗料で、エポキシやウレタン塗料との相性が良いです。
- 亜鉛クロメートプライマー: 金属表面に使用され、特に防サビ効果が高いですが、環境への負担を考慮して使用する必要があります。
シリコンオフにより脱脂処理
ステンレス浴槽塗装の最も重要なステップが脱脂処理です。塩素系の溶剤クリーナーはステンレスを腐食させることがあるため、非塩素系のもので、人間の脂を洗浄するための強めの脱脂剤が含まれているものが適しています。シリコンオフを使用することをおすすめします。
ステンレス浴槽塗装に適した脱脂処理用のクリーナーとして適しているものは下記となります。
- アルコールベースのクリーナー: イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコール系溶剤は、脱脂に優れ、迅速に乾燥するため、塗装前のクリーニングに適しています。
- 市販のステンレス専用クリーナー: Amazonや楽天で入手可能な、ステンレス専用のクリーニング製品は、安全で効果的な選択肢です。
- アセトン: 非常に強力な脱脂剤で、迅速に蒸発しますが、揮発性が高く引火性があるため取り扱いには最新の注意が必要です。
塗装手順
基本手順はホーロー塗装や他のタイプの浴槽DIYとほぼ同様の手順です。
- 浴槽の表面を研磨(クリーニング)※研磨器を使用するとよし
- 脱脂処理
- プライマーを塗布※乾燥後、複数回プライマー塗布を行う。
- サンドペーパーで下地調整と脱脂処理
- 専用塗料で仕上塗装
- クリア仕上げ塗布
作業順 | ポイント |
1.浴槽の表面の水気をとるクリーニング | 脂汚れを徹底的に洗浄するため、念入りに水気をとるクリーニングを行う。シリコンオフを使用する。 |
2.サンドペーパーで旧塗装を削り、表面を整える | プライマーののりに関わるため、2時間から3時間かけて丁寧すぎるくらいに表面を研磨する |
3.シリコンオフで清潔にする | アルコールベースのクリーナーを清潔な布にかけて浴槽を綺麗にする。 |
4.プライマーを塗布 | 仕上のムラや肌触りに影響するため、プライマーは丁寧に2回から3回にかけて丁寧に塗る。 |
5.十分な乾燥とプライマーを浸透させる | 1度プライマーを塗り終えたら、十分な乾燥時間をとり、2回3回と同じように塗装を繰り返す。 |
6.専用仕上塗料で塗装 | 仕上塗料、乾燥後クリア仕上の塗布で完了 |
塗装時の注意点:
- 換気しながら作業する
- 防毒マスクはしっかりしたものを準備する
- 塗料の乾燥時間を十分にとる
- 浴槽塗装のDIYは塗装剥げは高確率で発生することを認識する
ステンレス浴槽の塗装剥げの補修
剥がれた部分のみを修復するためのポイントを解説し、長持ちさせるコツも紹介します。
まず、基本的な流は上記のステンレス浴槽塗装のDIYステップと同様になります。特に気をつけなければならないのが、塗装剥げを起こした箇所だけの作業なのでマスキングテープやサンドペーパーでの作業により一層の慎重さを必要とします。
また、ステンレス浴槽の塗装剥げは浴槽と浴室の壁の間にあるシリコンコーキングから塗装はげを起こす可能性が高いです。なぜなら、シリコンの上には塗装はのらず、すぐに塗装剥げを起こしてしまうからです。
浴槽塗装の大敵はコーキングのシリコンなんです。なので、まずシリコンの状態を確認することがオススメします。
- 細かいサンドペーパー
- アルコールベースのクリーナー: イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコール系溶剤
- エポキシプライマー: ステンレスに優れた密着力を提供し、耐水性・耐薬品性に優れています。
- ステンレス用塗料(剥がれた部分と同じ色)
- ペイントブラシまたはスプレー塗料(ムラが出るのでスプレーは推奨しない)
- マスキングテープ(該当箇所だけの補修なので必須)
- クリアコート(オプション:エポキシベースのクリアコート)
また、最後にエポキシベースのクリアコートを使用すると仕上がりは良くなります。しかし、エポキシベースのクリアコートは固まるまで時間がかかるだけでなく、塗装の繊細さで大きく仕上がりが異なるので注意が必要です。
補修したけど、デコボコを感じ肌触りがよくなくなり、結局最初から浴槽塗装業者にお願いした方が時間コスト、経済コストともにお安くなるケースが多いです。
リメイクシートでステンレス浴槽補修は補修できる?
塗装剥げや錆といった問題をリメイクシートは小さいものであれば、リメイクシートを使用しても問題ありません。貼り方のテクニックや、仕上がりをキレイに見せるポイントも伝授します。
浴槽表面の準備
- 清掃: 浴槽の表面を完全に掃除し、汚れや油分を取り除きます。これにより、リメイクシートの接着力が向上します。
- 乾燥: 洗剤や水分が完全に取り除かれるまで、表面を十分に乾燥させます。
2. シートのサイズ調整
- 計測: 貼り付ける部分を正確に測定し、リメイクシートを必要なサイズにカットします。
- 予備カット: シートは少し大きめにカットし、貼り付け後に余分な部分をトリミングするのが一般的です。
3. 貼り付け
- 端から開始: シートの片端から貼り始め、徐々に残りの部分に向かって進めます。
- 気泡防止: ヘラやカードを使用して、気泡を押し出しながらシートを貼ります。シートを少し引っ張りながら貼ると、よりスムーズに作業できます。
4. エッジの処理
- きちんと密閉: シートの端はしっかりと密閉し、水の浸入を防ぎます。そして、必要に応じて、シーリング剤を使用しても良いでしょう。
5. 仕上げ
- トリミング: シートの余分な部分はカッターナイフで丁寧にトリミングします。この際、浴槽を傷つけないように注意してください。
6. 完全な乾燥
- 乾燥時間の確保: 貼り付けた後は、シートがしっかりと接着するまで一定時間乾燥させることが大切です。
補足点
- 温度と湿度: 高い温度や湿度は、シートの接着性に影響を与える可能性があるため、適切な環境で作業を行います。
- 修正: 貼り付け中に位置を修正する必要がある場合は、シートをゆっくりと持ち上げ、再度貼り直します。ただし、繰り返し貼り直しをすると、接着力が低下する可能性があるので注意してください。
リメイクシートによるステンレス浴槽補修の限界と注意点
しかし、注意点として認識しておきたいのがリメイクシートは高温、高湿度の環境下だとすぐに劣化する可能性があります。あくまでも短期的な補修で、長期的な補修としては不向きです。
また、取り付けも簡単なものではなく、うまく貼り付けができない場合はシートのしわや気泡の原因となり見栄えを損なうことがあります。
一度貼り付けられてしまうと、リメイクシートを除去するのが非常に困難です。そして、除去の過程で浴槽本体に傷をつけてしまうことが多々あります。
取り替えようとなった時も、表面にびっしりついてしまっていると、これを取り除くのに非常に大変で追加費用が発生する可能性もあります。
数千円から1万円札程度でリメイクシートを活用してステンレス浴槽の補修は経済的ではありますが、結果的に「安かろう悪かろう」と結果に満足しない方が多いです。
もしリメイクシートに数万円をかけるくらいなら、浴槽塗装業者に依頼する方が施工総額が10万円前後なので経済的です。
ステンレス浴槽の錆を落とす方法
台所にあるものでも、小さなサビであれば簡単に対処は可能です。また市販の錆とり剤を使用すれば綺麗にさびは除去できるでしょう。ただし、ご自身で行う場合は浴槽の表面を傷つけないように細心の注意をして作業を行なってください。
1. ベーキングソーダと水
- 方法: ベーキングソーダ(粉末状の炭酸水素ナトリウム)と水を混ぜてペースト状にし、錆の上に塗ります。
- 使用法: ペーストを錆に塗り、しばらく放置した後に柔らかい布やスポンジで優しく擦ります。
- 注意点: 硬いブラシや研磨材は避け、表面を傷つけないようにしてください。
2. 白酢
- 方法: 白酢を直接錆の上に適用するか、布に浸して使用します。
- 使用法: 酢を数時間錆に作用させてから、柔らかい布やスポンジで擦ります。
- 注意点: 酢の酸性が強い場合は、水で薄めることを検討してください。
3. クレンザーと水
- 方法: 表面を磨きすぎたり、損傷を与えたりしない非研磨性クレンザーを選びます。それをさらに水で少し薄めて使用します。
- 使用法: 柔らかい布やスポンジにクレンザーを取り、優しく擦ります。
- 注意点: クレンザーの粒子が大きい場合は、表面を傷つける可能性があるため注意してください。
4. 市販の錆取り剤
- 方法: 市販されているステンレス用の錆取り剤を選びます。
- 使用法: 製品の指示に従い、適用してから柔らかい布で拭き取ります。
- 注意点: 強い化学薬品を含む製品は、浴槽の表面を損傷する可能性があります。
5. 防錆処理
- 方法: 錆を取り除いた後、ステンレス専用の防錆剤を塗布して再発を防ぎます。
- 使用法: 防錆剤を薄く均一に塗布し、乾燥させます。
使用上の注意
- どの方法も使用前には、小さな範囲でテストして、表面に損傷がないことを確認してください。
- 強い酸性やアルカリ性の製品、粗い研磨材を使用すると、ステンレスの表面を傷つけたり、さらなる損傷を引き起こす可能性があります。
- クリーニングの際は保護手袋を着用し、十分な換気を行うことが望ましいです。
カラーステンレス浴槽塗装 DIYのポイント
DIYでステンレス浴槽塗装をすると8割型、塗装剥げを起こします。そもそも、ステンレス浴槽塗装が最も技術にも難易度が高いです。それは、プライマーを塗る前にステンレス浴槽自体に細かな表面の傷をつけ具合がわからない空です。また、適切なペーパータオルが必要になるので、専門的な知識が必要です。
そもそも、浴槽の表面を研磨する意味は、プライマーのノリをよくし、仕上塗料の密着を高めることです。これが塗装剥げを防いでくれるので、ペーパータオルによる繊細な研磨作業が必要となります。
具体的な話をすると、粗いペーパーで大まかな傷をつけた後、細かいペーパーで仕上げを行い、プライマーが均一に乗るための細かい傷をつけます。プライマーは薄く何度も塗り重ねることで、接着力を保ちながら肌触りを良くします。
ペータータオルで下処理の加減が難しいです。実際に、「こんなに傷がつくものなの?」や「どれくらいペーパータオルを使って、次の目の細かいペーパータオルを使えばいいの?」、と不安になると思います。
厄介なのが、浴槽の状態によっても工程の細かく異なります。なので、技術的な側面から見ても、専門的な浴槽塗装業者に依頼するのが時間、経済的な面でもおすすめします。
ステンレス浴槽塗装を業者に頼む場合のメリット・デメリット
総合的に、「浴槽塗装業者へ依頼」が経済的な負担もそれほど大きくなく、材料等の管理処分も心配いらないのでおすすめです。信頼できる業者が見つかれば活用する方が高い満足度を期待できます。
解決手段 | メリット | デメリット |
DIY | 費用が安い、自由度の高いデザイン | 時間がとにかくかかる。仕上がりにムラが出る、浴槽塗装剥げを起こす、道具の後始末・管理が面倒 |
浴槽塗装業者 | 浴槽入れ替えの10分の1(10万円前後)で頼める、施工日数が早い | DIYよりは費用はかかる、信頼できる業者を見つけるのが難しい |
浴槽入れ替え | とにかく清潔で綺麗。手間要らず | 費用が高い、浴室が使用できない期間が長い |
解決手段 | 費用 |
DIY | 2万円〜5万円 |
浴槽塗装業者 | 10万円〜15万円 |
浴槽入れ替え浴室リフォーム | 80万円〜150万円 |
実際の施工事例についてみてみましょう。
スレンレス浴槽塗装前
築50年の浴槽なので、経年劣化がひどく掃除をしても落としきれない水垢がひどい状態でした。コーキングから発生したカビや、サビも浴槽についてしまい全体的に清潔感を欠いた状態でした。
ステンレス浴槽塗装後
ステンレス浴槽の研磨を徹底的に行い、サビなどの補修を施した後、入念なプライマーと仕上塗料の塗布を実施。最後はホワイトクリア仕上にて、全体的に光沢感を出す仕上がりになりました。汚れ防止の浴槽コーティングも塗布実施しています。
その他、ステンレス浴槽施工事例についても紹介しております。
まとめ
ご自身に合うプランを見つけてみてください。
- DIY塗装の検討: ご自宅のステンレス浴槽にDIY塗装する。エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料など、適切な塗料の選定を行い、塗装の作業を計画する。
- 必要な材料の準備: DIYに必要な材料、仕上塗料、サンドペーパー、研磨器、プライマー、シリコンオフ、ゴム手袋、防毒マスク、清潔な布、電動ポリッシャなどを事前に用意してください。
- 塗装プロセスの理解と実施: 記事で紹介された手順に従って、浴槽の塗装を進めてください。特に、表面の脱脂清掃、サンドペーパーによる下地処理、プライマーの塗布、仕上塗料の塗布の方法に注意を払ってください。
- リメイクシートの検討: 塗装以外の選択肢として、リメイクシートの使用を検討してください。ただし、リメイクシートの利点と限界を理解し、適切な場合にのみの使用をおすすめします。
- プロのサービスを検討: DIYでの塗装が難しい場合は、浴槽塗装業者に依頼することを検討してください。この場合、見積もりの明確さとサービスの質を比較検討し、信頼できる業者を選ぶことが重要です。